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第三世代の認知行動療法―マインドフルネス
仏教瞑想を基盤とし、「今・この瞬間」に気づきを促す『マインドフルネス』は、第三世代の認知行動療法として、心身医学や精神医学、また臨床心理学分野でも広くその効果が認められており、アメリカの主要な医学部の多くがマインドフルネスセンターを設けています。
今回、世界的な精神的指導者であり、ノーベル平和賞候補者にもなった禅僧 ティク・ナット・ハン師の教えを伝承する、『プラムヴィレッジ』(南仏)の僧侶団による1日のマインドフルネス研修会を、医療者及び心理職者を主な対象として行います。
当研修は患者への提供価値のみならず、医療者自身のセルフケアとしても大いに価値あるものです。日常の忙しさから離れ、マインドフルネスの源流に触れながら、ゆったりとした瞑想的時間を味わうことは、新たな健康価値の創造に役立つでしょう。
みなさまのご参加を心よりお待ち申し上げます。
― 主催者代表 聖路加国際病院精神腫瘍科部長 保坂隆 ―
当研修は下記トピックを中心に、一日をかけてゆったりと進行されます。
※ティクナットハン禅師は現在療養中で来日は難しい状況です。当研修は師に代わり、後継者で全世界のセンターで指導を行っている最高クラスの高弟(33名の僧侶団)により進行されます。
※進行状況によって内容が変更することがあります
◆ |
特別講義「臨床における瞑想の活用」 保坂隆 (聖路加国際病院精神腫瘍科部長) |
~ 以下プラムヴィレッジによる | |
◆ | マインドフルネス呼吸法 ・呼吸に注意を向け腹部や鼻腔などの感覚の変化に注意を向けます |
◆ | シッティングメディテーション [座瞑想] ・座りながら瞬間瞬間身のまわりに起こることを判断せずに気づいていく |
◆ | マインドフルネス講義 ・マインドフルネスと健康に関する基本情報を提供します |
◆ | イーティングメディテーション [食べる瞑想] ※昼食が準備されます ・ひと口ひと口じっくりと味わいながら食事をします |
◆ | トータルリラクゼーション [ボディスキャン瞑想] ・足の先から頭頂まで順番に身体感覚に注意を向けていきます |
◆ | ウォーキングメディテーション [歩く瞑想] ・足や脚の感覚とその変化に注意を向けて歩きます |
◆ | シンギングメディテーション [歌の瞑想] ・ 「今・ここ~わが故郷」に帰る、歌による瞑想です |
◆ | グループシェアリング |
※当研修はPlum Village、AIAB、ティクナットハン2015来日招聘委員会 の協力のもと行われます。
マインドフルネス=Mindfulness は、日本語では『念』や『気づき』などに直訳されることもありますが、「今・この瞬間」の現実につねに気づきを向け、身のまわりに起こっていることをあるがままに知覚する(思考や感情にとらわれない)心の持ち方やありようのことをいいます。
マインドフルネスの語源となるパーリ語"Sati"には、「心にとどめておくこと」またはそのための「注意力」という意味があります。2600年前にブッダが人生の苦悩から解放されるための要として提唱したと言われており、マインドフルネスは仏教瞑想の呼称でもあります。
西洋では、宗教を超えたマインドフルネス瞑想が、心理療法から死の看取りや平和活動にいたるまで、広い範囲で応用実践されています。リラクセーション効果の他、注意力や洞察力などを高めことが認められていることから、私たちのもつ潜在的な能力を生かして、人生を上手に管理するための体系的方法といえます。
臨床応用で認知されているものとしては;
ー Kabat-Zinnによるマインドフルネスストレス低減法[MBSR:Mindfulness-Based Stress Reducti
ー Teasdale等のマインドフルネス認知療法[MCBT: Mindfulness-Based Cognitive Therapy
ー Hayes等のアクセプタンス・コミットメントセラピー[ACT: Acceptance and Commitment Therapy]
などがあります。
◆脱中心化
マインドフルネスの臨床応用で重要視されるものに、「脱中心化」という概念があります。これは、他者の視点に気づかず、自己の視点からしかものごとを見ることが出来ない状態から脱し、多様な視点の存在に気づき、他者の視点からもものごとを認知することが出来るようになることをいいます。脱中心化により、誤った判断を脱して、いままで意識してこなかったさまざまな側面も考慮にいれた判断を行えるようになることで、心のしなやかさが培われ、精神的安定を取り戻せます。日常に起こる現象は今までとさして変わらなくとも、心の中は水鏡のような穏やかさを保つことが可能となるのです。
◆呼吸に帰る
マインドフルネス瞑想の基本となるのは『呼吸』です。
呼吸は私たちの心の空もようにかかわらず、いつでも・どこでも共にいる、決して裏切ることの無い親友であり、一呼吸で帰ってこれる故郷のようなものです。
仏典にアーナパーナサティ・スッタと呼ばれる、呼吸による完全な気づきの経典がありますが、これは数ある経典の全ての基礎となるものとされており、怖れ、絶望・怒り・渇望を変容させると言われています。
呼吸は目覚めの道であり、丁寧に、持続的に、深く
観察することで、あらゆる対象の本質を見抜き、心の解放をもたらすとされています。
ティク・ナット・ハンは平和活動に従事する現代における代表的な仏教者であり、行動する仏教または社会参画仏教を意味する"Engaged Buddhism"の提唱者です。 アメリカとフランスを中心に仏教およびマインドフルネスの普及活動を行なっています。 瞑想、マインドフルネス、平和に関する85冊の著作を執筆し、その中には、『私を本当の名で呼んで』、『一歩一歩が平和』、『平和であること』、『平和に触れる』、『生きた仏陀・生きたキリスト』、『愛について』、『解放への道』、『怒り』といったベストセラーが含まれます。 ティック・ナット・ハンの教えの核心は、マインドフルネスの実践を通して、私たちは過去や未来ではなく、今・この瞬間に生きることを学ぶということで、そのことこそ、自らの中に、また世界において平和を育む唯一の道としています。 |
1926年 |
ベトナム生まれ。 |
1942年 |
出家 |
1966年 |
渡米してベトナム戦争の終結を強く訴え、詩や著作を通してアメリカ社会に禅を根付かせるのに貢献。その思想は、キング牧師に深い影響を与える。 |
1967年 |
マーチン・ルーサー・キング牧師の推薦によりノーベル平和賞の候補となる。 |
1973年 |
パリ平和会議でベトナム仏教徒主席代表を務める。 |
1982年 |
南フランスにプラム・ヴィレッジ(Plum Village Midnfulness Practice Center)を設立。社会的活動を継続するとともに、その教えにひかれて集まる多くの人々へのマインドフルネス瞑想の指導を始める。 |
2001年 |
ハーバード大学医学大学院よりマインド・ボディー・スピリット分野における功績を称えてMind/Body/Spirit賞が授与される。 |
2003年 |
アメリカの連邦議会にて2日間の瞑想リトリートを指導。 |
2006年 |
パリのユネスコ本部で、暴力、戦争、地球温暖化の悪循環を解消するための具体的手段を要請する演説を行う。 |
2007年 |
ハノイにてユネスコ主催の国際ウェーサカ祭に基調講演者として招かれる。 |
2008年 |
インド国会にて開会の辞を述べる。 |
2009年 |
メルボルンの万国宗教会議で講演。 |
2011年 |
カリノフォルニアのGoogle本社で1日マインドフルネスによるリトリートの指導を行う。 |
2012年 |
ウェストミンスターの英国議会及びストーモントの北アイルランド議会に招かれ、慈悲と非暴力のメッセージを伝える。 |
2013年 | ハーバード大学医学大学院、世界銀行、Google本社等にてマインドフルネスの指導を行う |
プラムビレッジはティク・ナット・ハンにより、1982年に南フランスに開設された仏教共同体で、ベトナム、日本などのアジアをはじめ、ヨーロッパ諸国、イスラム教の人など、200人以上のブラザー、シスターと呼ばれる僧侶、尼僧が暮らす、ヨーロッパ最大の仏教系リトリート(瞑想会)となっています。
(プラムビレッジのHPはこちらhttp://www.plumvillage.org)
プラムビレッジは、宗教や宗派を超えたリトリートとして、老若男女問わず、世界中から40カ国以上、1万人以上の人々が年間を通して集まります。
その名の通り、プラム(すもも)の木がたくさんあり、まわりはブドウ畑、夏はひまわり畑、と自然豊かな美しい風景がみられます。
家族連れでサマーリトリートに参加する人も多く、夏には湖の畔でテントを張ったり、冬にはクリスマスや新年のお祝いをしたりと、年間を通してたくさんの人がプラム・ヴィレッジでマインドフルネスを実践しています。